小説には色々なジャンルのものがあります。
(実際には、明確にジャンルを分けするのは難しいタイプのものもたくさんありますが……。)
このページでは私が読んだことのある小説から、各ジャンル1冊(または1シリーズ)ずつ、
ご紹介いたします。
小説には色々なジャンルのものがあります。
(実際には、明確にジャンルを分けするのは難しいタイプのものもたくさんありますが……。)
このページでは私が読んだことのある小説から、各ジャンル1冊(または1シリーズ)ずつ、
ご紹介いたします。
一言で言うなら、「ライトなミステリ」。
「恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある」と自称する高校生の男女が主人公。
2人は自分の性格の悪いと思っているところを直して人畜無害な「小市民」を目指す同志として、
お互いの存在を言い訳にしてうまくやっていこう、という約束をしています。
「春期」と「夏期」では、そんな2人が出くわしてしまう、
(主に)日常の中や延長線上の小さな事件とその解決を描いた連作短編で、男の子の一人称で語られます。
「秋期」は長編で、複数の視点から、小さいながら長期にわたって続き、
少しずつ大きくなる連続放火事件の顛末が語られます。
特に気に入っている短編は、「春期」の「おいしいココアの作り方」。
友人に、とある方法(作中で提示される)を用いて作られた「おいしいココア」を振舞われます。
しかしそれを作るのに鍋を使って牛乳を温めた形跡はありません。
それではどうやって作ったかという話になります。色々な案が出ますが、
カップで牛乳を温めて作るには、明らかに面倒くさい手順になってしまうなど、
なかなか謎は解けません。さて、友人はどうやって「おいしいココア」を作ったのか?
こういったほのぼのした話から、自転車の盗難から展開される詐欺の企みの話など、 ミステリによくある殺人事件を扱うものよりも、軽く楽に読める話が詰まっています。 また、主役二人の関係も面白いものがあり、一種の青春もの(?)としても楽しめます。
某魔法学校ものなどのメジャーどころあえて外してみました。 ここに挙げたのはまるで知名度の無い作品ですが、非常に良作であると思っています。
王の住まう一つの島を中心に、多数の島が海上を公転する世界が舞台です。この海は人体に毒で、
むやみに入ることはできません。そして、この世界では、「魔物」が人の中に生まれることがあります。
普段は美しい人の姿を持ちながら、太陽には焼かれ、しかし決して死ぬことはなく、
冬至の夜には抗えない衝動に駆られて人を喰らう「魔物」という存在。
その冬至の夜に、名を持たず仮面で顔を隠して世界各地を巡り集めた話を伝え歩く
「語り部」たちが、島主の館で焚き火を囲い交代で夜通し語り続ける「煌夜祭」。
煌夜祭の夜、廃墟となった島に訪れたたった2人の「語り部」によって交互に物語が語られる、
という形式でこの小説は構成されています。(語り部のやり取り→物語→語り部→物語→…)
静かに語られるのは、最初は一話完結の物語です。役立たずとして間引かれた、役立たずのキノコ「ムジカ」の名を持つ子どもが、森で美しい人「姫」と出会い助けようとする話から始まり、
機知と悲恋の話、王座を巡る戦乱など、それぞれに面白みや重みがあって引き込まれるのですが、
それらが読み進むにつれ次第に連なり積み重なりリンクして、
最後には2人が現在いる島も語り部自身も組み込まれた大きなひと括りの物語をなしていくのが
素晴らしかったです。
「ムジカ」と「姫」の結末、「魔物」はどうすれば死を得るのか、そして
果たして「魔物」が生まれてくる意味とは何なのか。
口惜しい結末も沢山あったのですが、最後に描写される情景は静かに心に沁み入ります。
表紙や中扉のページが漫画っぽい柄のイラストなので敬遠されることもありそうですが、 内容は面白く、また非常に読みやすくて取っつき易いSFだと思います。
舞台は「死後の世界」。とはいっても霊魂だとかの話ではなく、主として身体が死んだ後に
(旅行に来ている生者などもいる)、採取しておいた人格データをある程度の規定内で作成された
身体データとで出来た人間が生活する、電子世界での話です。
住める「世界」には、小説内で言う「現代」に近い世界を始めとして、
様々な世界がプログラムされているが、探偵業を営む主人公が住んでいるのは、
昭和の時代を模して、わざわざ余計なデータ量を使って「不便」を再現するという
開発が行われている世界です。(例:全てがデータで構成されている世界では、
「熱いコーヒー」がそのままであるより、「コーヒーが冷める」という現象を表現する方が、
余計なデータや処理が必要。)
昭和っぽい場所で、それらしからぬ言動をする人には「雰囲気を壊すな」などと言う世界描写が 自然に行われ、それだけで面白く思えるのですが、 そんな世界で主人公が依頼されたり巻き込まれたりする出来事・事件が、 この小説のSF設定のならではのギミックが仕込まれた展開を見せます。
なんとも風変わりですが、それだけに面白く読めました。一応恋愛もの、ということにしておきます。複数人(ただし犬を含む)の視点から、独特のテンポで語られます。
「辻切りのように」男と交わるいんらんの母から生まれた七竈という絶世の美少女と、「親友」の美少年雪風や後輩、「可愛そうな大人」ら、彼女を取り巻く人々のお話です。
どこか奇妙なことが、無造作に配置されたような感じで、派手で心躍る展開を持つ話とも、
キラキラした恋愛の話とも、情に訴える壮大な悲劇でもないですが、
変な雰囲気で引っ張られ、だんだんとしんみりして、溜息がしたくなる物語でした。