水彩の画法
絵の具にはそれぞれ特性があるので、扱い方もそれぞれ違いがあります。
ここでは、水彩で基本と思われる塗り方や私の良く使う塗り方について、いくつか紹介します。
いつもなんとなく感覚で塗っているものを、参考書の類も見ずに書き起こしているので、
名前はテキトーであること、実際とやや異なってしまっているかもしれないことをご了承ください。
前提として、気をつけて欲しいのは、水彩絵の具は「乾くと色が褪せる」ということです。
水に溶けているうちは鮮やかに見えても、
紙に塗って乾いた時には必要以上に落ち着いて見えることがよくあります。
乾いた後に塗り重ねても、乾かないうちに色を足しても良いですが、
塗る時は薄くなるということを意識して、少々濃い目を心がけた方が良いと思います。
なお、以下「水をつけた筆」を「水筆」と表記します。
グラデーション
ポイントは、塗った色が乾かないうちに速やかにグラデーションを作ることです。
いちいち筆を水受けでよく洗っていたら時間がかかるので、筆を複数用意しておくと楽です。
その一:濃く→薄く
- 筆を2本用意します。また、グラデーションにしたい色も作っておきます。
- 筆で色を一筋二筋(一番濃くしたい面積+α分)塗ります。
- 水筆で色の端を横に真っ直ぐ撫でて色を滲ませます。
- 段々と位置をずらしながら横撫でし、
水筆に水分を補充して色なし水分率を増やしていくことで色を薄くします。
(グラデーションの色の変化の向きが↓の場合:筆の動かし方は常に⇔)
その二:色A→色B
- 筆を3本用意します。また、グラデーションにしたい色A,Bも作っておきます。
- 筆で色Aを一筋二筋(一番濃くしたい面積+α分)塗ります。
- それと平行に、筆で色Bを一筋二筋(一番濃くしたい面積+α分)塗ります。
- 水筆で両色の間を横に真っ直ぐ撫でて、両方の水分を色を繋げて滲ませます。
(グラデーションの色の変化の向きが↓の場合:筆の動かし方は常に⇔)
と、こうは書きましたが、色の広がりが足りない、とか思ったより色が薄くなった、
とかいう時は、乾かないうちにさっさと色を足したりして調整して下さい。
乾いた後では、滑らかなグラデーションを保ったまま一部に塗り重ねるのは困難です。
ただし、筆の動きはグラデーションの動きと垂直を保った方が良かろうと思います。
ふわふわ滲み
ふわふわした感じに色を置きたいときに使います。
色のふちがぴしっとなったり濃くなったりせず、ぼんやりぼやけた状態に塗れます。
また、複数色を近くにor重ねて配置してぼんやり混ざるようにもできます。
- 使いたい色を溶かして置きます。
- 水筆で、色を置きたい範囲一面にたっぷり水を塗りつけます。
- 乾かないうちに、色を配置していきます。
これは最初に塗った水がどれくらい水浸しか乾き始めているかで、色の広がり方が大きく変化します。
水分が多い場合、最初の色のにじみ方は根っこが生えていくようなものでも、次第に滑らかになったりします。色は塗り付けた水が乾くまで、じわじわと滲むので、経過に気をつけて下さい。
フラッシュ
色の中にツンツンした白を咲かせる方法です。
- 好きな色を塗ります。(濃い目の色の方が後で白が目立ちます)
- 色が乾かないうちに、水筆の先で色の中の一点を付きます。
- すると、水筆から降りた水が、色を削り取り、その部分だけ白く残ります。
また、透明な水で白を残す以外にも、
- 好きな色Aを塗ります。(濃い目の色の方が後で白が目立ちます)
- 色が乾かないうちに、別の色Bを含ませた筆の先で色の中の一点を付きます。
- すると、水筆から降りた色Bが、色Aを削り取り、Bの滲みが残ります。
というように、色を入れることもできるはずです。
最初に配置した色の濃さや乾き具合、落とした水の量(水筆の濡らし具合、太さ、突き方による)で、
白の広がり方が大きく変わります。枝が360度に伸びたようなフラッシュから
ぼんやりした円に近いものまでできるんじゃないかと思います。ツンツンしたのが良いなら、
色は濃い目に作ったものの方がよいかもしれません。
透かし重ね
水彩の透明度の高さを生かした塗り重ねです。
水彩は、ある色が乾いてから別の色を上に塗ると、
下の色が新しく塗った色を透けて出て二つの色が重なった色に見えます。
以下には、例の一つを示します。
- 青色で空を塗ります。
- 青が完全に乾いたら、黄色で葉っぱを塗ります。
- すると、葉っぱは青と黄が重なって緑色に見えます。
水彩は上から下の色を塗りつぶすのが難しく、背景色と前景の色とを隙間なく塗りたい場合、
かなり神経質な作業が必要です。上記の方法では、その苦労をせずにそれを行うことができます。
ただし、色を混ぜたり重ねたりすると、減法混色の関係か、発色はくすみ易いので注意。
あまり上から擦ると下の色が溶け出しておかしなことになる可能性もあるので気をつけて下さい。
ティッシュ矯正
水彩は色の濃さや滲み方などの調整が難しく、また、一発勝負的なところがあります。そんな特性に恐れをなした人も、ティッシュがあれば安心です。私はこれをやたらを使ってしまいます。また、表現の一部としても使えるでしょう。ただし、「いかにも水彩」な出来上りにしたい場合、表現方法としては控えた方が良いかもしれません。
- 色を塗りました。
- まずいと思ったらティッシュで押さえて色を吸い取ります。
(紙や絵の具の濃さにもよるが)すぐやればおおよそ色は取りのけられます。
- 一度吸い取って色が残りそうだったら、水筆で撫でて再び吸い取ります。
- 絵の具または水を塗りました。
- ティッシュでいくらか吸い取って絵の具量・水分量調整をします。
- 色を塗ります。
- ふちだけ少し吸い取って、水分が多い場合などのよく現れる、水分のふちへの色の集中によりできる色の線を予防します。
あるいは、重ね塗りをした際、下の色との境をなるたけ自然にしたい時にも同様にします。
乾くまで限定の消しゴムのようなものと思えば良いと思います。
ここまで紹介してきましたが、実際の制作時にはやり方などほとんど気にせず自由に塗りつけることが
多いです。ですが、塗るにあたっての水彩絵の具の特性をなんとなく掴むのに、これらの技法を
知ることは多少の役に立つのではないかとも思います。
油彩の技法と比較してみると、面白いかもしれません。
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